ふるさと丹波におけるやながわの役目

河川改修もされていない幅五十mほどの竹田川。川沿いの竹藪が川に被さっている。その川に架かる小さな木の橋の上に姉二人と竹ぼうきを持って立っている。橋を渡る蛍を竹ぼうきでとるのである。橋の上から見る川面と竹やぶのステージは、まさに息をのむ蛍達の乱舞ショーであった。(柳川拓三)

「丹波発 食と農と里山」より抜粋

株式会社やながわの代表取締役である柳川拓三(やながわたくみ)が想いを馳せる故郷は、まさに恩師である足立一彦氏が描いてくださった丹波の風景そのものです。春には野に花が咲き乱れ、夏にはホタルが舞い、秋には美しい紅葉と味覚にあふれ、そして厳しい冬を迎える。

毎年同じように流れてゆく時の流れ、平凡ながらもそこに住まう人々の営みの中には、我々が知る由もない1000年も前から受け継がれてきた伝統を守るための習慣も少なくはありません。

近代化が進み、消費の時代を迎えた今となっては見かけなくなりましたが、ほんの少し前までは秋になると夜中にボトッ、ボトッと音を立てて落ちた見事な栗を拾い集めて居間で皮を剥く母の姿をみて「あぁ、秋がきたんだな」と季節を感じたものでした。
中には「丹波栗が庭に実っているなんて羨ましい」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、それはなにも「高級な特産物の丹波栗だから母が剥いていた」のではなく、秋には庭の栗を食べるのが生活の営みに組み込まれていたからなのかもしれません。
当たり前のように生活の中に溶け込んで、当たり前のように守られてきた営み。親から子へ、子から孫へ受け継がれてきたその営みも最近ではあまり姿を見かけなくなってまいりました。

 

原料供給の町としての歴史

いまこうして見ている風景。何気なく生活の中で見ている風景ですが、100年前も1000年前にこの地に住む先人たちが見てきて風景と同じものでしょうか、違うものなのでしょうか。
ただ、風景は変わらなくとも、私たちを取り巻く環境は大きく変わっていったのは事実かと思われます。

丹波という地域は多くの特産物を持ちながらも、京の都に隣接し、また商業の街大坂(大阪)にも近かったため、古くから原料(1次産品のまま)の供給場所としてその特産物を出荷していた歴史を持ちます。

それ故に丹波の中で特産品に加工することも活用されることも少なく、手塩にかけて育てた特産物も「生」の販売の時期の一瞬で終わってしまいます。人が生きてゆくうえでどうしても必要なのが収入。その収入が気候次第の安定しない農業はやめ、安定した収入が得られる仕事に就く人が増えてゆきました。年々生産者と共に生産量が激減してゆきました。

1000年も昔から書物に記されてきた「丹波の栗」をはじめとした特産物。どのように素晴らしい歴史を持っていたとしても1次産品でしか出荷できないままでは生産量はさらに減少する可能性がございます。

 

地域の中で循環してゆく仕組みが必要

今のような情報がすぐに手に入る時代ではない頃から名を馳せていた「丹波の特産物」。今でも秋になると多くのお客様が足をお運びになり「秋になったらやっぱりこれを食べないとね」と笑顔でお話してくださいます。その言葉は私どもにとって最高のお言葉でもございます。

これまでは秋にしか楽しめなかった秋の味覚。もちろん旬の時期にお召し上がりになることが大切ではございますが、やながわではまず加工場を設けました。そうすることで長い期間にわたり丹波の味をお楽しみいただけるようになります。それと同時に農家でなくとも特産物に関わる雇用が生まれます。

その加工場で製造された特産品や原料を全国の業者やお店へ卸すことで、丹波の味をこれまでよりも多くの方にお楽しみいただけるようになりました。

しかし、時代の流れはさらに加速し、特産品として加工したとしても多くの人には思うようには味がお届けできなかったため、平成17年に夢の里やながわ直営店(現・本店旧店舗)をオープン。

老若男女とわず多くの人に愛される和洋菓子の中に加工場で加工した特産品を使用して販売はじめさせていただきました。

こうしてやながわでの特産物の消費量を増やすことで生産者からの仕入を増やすこそができ、ひとつの循環した流れが生まれ、やがて生産者・加工業者・販売者・お客様という輪になり地域の活気、そして丹波の特産物への活気に繋がると信じて励ませていただいております。

 

もっと多くの皆様に丹波を伝えたい

人の数だけ故郷がございます。誰にとっても故郷というものは冒頭でも紹介したような長閑で思わず微笑みがこぼれてしまう思い出がいっぱい詰まった特別な場所だと思います。手前どもにとってもやはり故郷である丹波にはいろんな思い出が詰まった場所。
思い返してみるとその多くの思いでは特産物と共に営まれてきた数々の習慣であったような気も致します。

「1人でも多くのお客様に丹波の味と心をお伝えしたい」という願いは尽きることがございません。もっと多くのお客様に丹波の味や丹波の心を応援していただけるように私たちは自分どもの役割を進んでゆく想いです。

これには皆様のご支援やご愛顧が無くては到底かなう事ではございません。不手際やご迷惑をおかけすることもございますでしょうが、今後ともどうか丹波の味・丹波の心を応援していただけますよう邁進してまいりますので之までと変わらぬご愛顧の程、よろしくお願い申し上げます。

PAGE TOP